生活習慣病
(高血圧・高脂血症)

生活習慣病について

「生活習慣病」は日常の生活に影響を受けて発症、進行する疾患です。バランスの悪い食事や睡眠不足、喫煙や飲酒、激しいストレスなどが蓄積するとさまざまな不調につながります。
忙しいときなどは規則正しい生活が難しいこともあるでしょうが、健康を維持するためにも生活習慣を見直しましょう。

代表的な良くない生活習慣

  • 食生活の乱れ

  • 運動不足

  • ストレス過剰

  • 喫煙

  • 過度な飲酒

  • 睡眠不足

悪い生活習慣を続けていると
さまざまな病気を引き起こす原因に

  • 1段階目

    生活習慣病

    • 肥満症・高脂血症
    • 糖尿病
    • 高血圧症
    • 骨粗鬆症
  • 2段階目

    重症化・合併症

    • 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
    • 脳卒中(脳出血、脳梗塞等)
    • 糖尿病の合併症(失明・人工透析等)
    • がん
  • 3段階目

    生活機能の低下・要介護状態

    • 半身麻痺
    • 日常生活に支障
    • 認知症

代表的な生活習慣病

  • 高血圧

    血圧とは、心臓が血液を押し出す際に血管壁にかかる圧力のことです。一般には「上」「下」という二つの数字で表現されますが、正確には心臓が収縮したときの血圧が「上」、心臓が拡張したときの血圧が「下」です。
    高血圧の定義としては、診察室での測定で上が140、下が90以上、家庭での測定なら135、85以上が複数回測定されることを指します。
    高血圧は脳や心臓、腎臓などの疾患につながりやすいことが知られています。
    また、実際に正常血圧といえるのは120/80mmHg未満であり、診察室血圧120/80mmHg以上で脳心血管病のリスクが増加することが知られており注意が必要です。

  • サイレントキラーと言われる高血圧

    高血圧が続いても、初期には特に自覚症状が無いことが多いですが、血管への負担が長く続くことで動脈硬化が進みます。血管の壁は負荷を受けることで少しずつ硬くなっていきますし、それによって血管の弾力は失われていきます。すると次第に血流が悪くなっていきますから、さまざまな疾患のリスクが上がるのです。
    心臓の血管で動脈硬化が起こると狭心症になることがありますし、脳の血管が硬化すれば脳梗塞につながります。さらに、大動脈であれば動脈瘤破裂が起こることもあり、生命に関わることもあります。
    動脈硬化は起こってしまうと治すことができませんから、そもそも動脈硬化を起こさないことや、悪化させないことが重要です。

    その他にもこんな病気を
    引き起こします

    高血圧が慢性化すると、血管壁に負荷がかかり続けて次第に硬くなり、弾力性も低下します。また、コレステロールなどが血管の内壁に蓄積すると、血液が流れにくくなります。動脈硬化が進行すると、心臓や脳、腎臓や大動脈などに以下のような不具合が起こるリスクが上がります。

    • 心血管障害:心肥大、心不全、狭心症、心筋梗塞 など
    • 腎機能障害:腎硬化症、腎不全 など
    • 脳血管障害:脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血 など
    • 血管障害:大動脈瘤 など
  • 当院で行う高血圧治療

    生活習慣の改善

    高血圧は生活習慣に関係していますから、食事の内容や喫煙の習慣などを見直し、適度な運動を取り入れることが改善につながります。

    減塩 食塩摂取量6g/日未満
    肥満の予防や改善 体格指数(BMI) 25.0kg/m2未満
    節酒 アルコール量で男性20~30mL/日以下*、女性10~20mL/日以下
    運動 毎日30分以上または週180分以上の運動
    食事パターン 野菜や果物、青魚などの多価不飽和脂肪酸を積極的に摂取、飽和脂肪酸・コレステロールを避ける
    禁煙 喫煙のほか間接喫煙(受動喫煙)も避ける
    その他 防寒、情動ストレスのコントロール
  • 内服薬による治療

    生活習慣の見直しによって血圧が十分にコントロールできない場合、内服薬を処方することもあります。
    どんな薬剤でも使用すれば何らかの副作用はあり、高血圧の薬も例外ではありません。とはいえ、高血圧は生命にも関わる合併症を引き起こす可能性がありますから、トータル的な視野で治療を進める必要があります。

  • 血圧が下がっても油断は禁物です

    生活習慣の改善や内服薬の利用によって、血圧が下がってくると多くの方が安心されます。とはいえ、そこで取り組みをやめて良いということはほとんどありません。いったん目標値まで血圧が下がったからと、暴飲暴食や睡眠不足、運動量の低下などが続けば、またすぐに血圧は上がっていきます。
    また、処方された薬の使用を、医師に相談なくやめてしまうことも好ましくありません。いったん血圧が落ち着いたことで自己判断して薬の服用をやめ、血圧が上がったら服用を再開する、といった行動をとると、「跳ね返り」と呼ばれる血圧の急上昇が起こることもあるからです。
    これを踏まえて、処方された薬は指示を守って服用すること、何らかの理由で中断したい場合は医師に相談することが重要です。薬を飲み続けることも大変でしょうが、治療方針を変えたい時には必ずご相談ください。

  • 高脂血症(脂質異常症)

    過度な飲酒や油っぽいものを好む食生活、運動量の不足などを続けていると、中性脂肪や悪玉コレステロールなどが増え、善玉コレステロールが低下して高脂血症(脂質異常症)になることがあります。
    高脂血症は糖尿病や高血圧と比較して、認知度が低い傾向が見られます。しかし、高血圧と高脂血症の両方が重なると、血管壁へのダメージが強まるので動脈硬化が起こりやすい状態となります。また、糖尿病患者の場合はインスリンの作用が低下して中性脂肪が蓄積しやすい状態になるので、高脂血症のリスクが上がります。
    つまり、生活習慣病は単独でも問題ですが、併発することでさらに大きな問題を引き起こしてしまうため、リスクを知って生活習慣を見直し、早めに検査や治療につなげることが非常に重要です。

  • 放置しているとさまざまなリスクがあります

    高脂血症(脂質異常症)があると動脈硬化が進行するリスクが高まります。高脂血症も動脈硬化も身体にさまざまな悪影響を及ぼす合併症のリスクを高めるので、予防や早めの治療が非常に重要です。以下に具体的なリスクの一部を紹介しますので、まずは危険性を把握することから始めましょう。

    脳卒中のリスク
    動脈硬化が脳の血管で起こると、くも膜下出血や脳出血、脳梗塞などの生命に関わる疾患を起こすことがあります。また、運動機能や発語などに後遺症が残ることもあるので、早めに適切な治療を受けましょう。
    心疾患のリスク
    高脂血症や動脈硬化があると、狭心症や心筋梗塞などの疾患のリスクが高まります。
    すい炎のリスク
    短期間に中性脂肪値が上がった場合、吐き気や腹痛を伴う急性膵炎を起こすことがあります。
  • 高脂血症(脂質異常症)の治療

    生活習慣指導

    野菜や果物などを意識的に取ること、コレステロールが多い飲食物を減らすことを心がけましょう。また日常に適度な運動を取り入れること、質の良い睡眠を十分にとることも重要です。さらに、飲酒の習慣も高脂血症につながりやすいので、医師と相談しながら量を減らすことをおすすめします。

  • 糖尿病

    糖尿病は日本人の1割も存在すると言われるほど多い疾患です。
    悪化するとのどの渇きが顕著になるので水分を取り過ぎることが増え、尿の回数も増えます。また体重が減ってくる傾向も見られますが、自覚症状が無いまま進行している場合も少なくありません。
    糖尿病は2種類に分けることができ、インスリンが不足して血糖値がコントロールできなくなることで起こる1型糖尿病と、生活習慣が乱れたことによって起こる2型糖尿病があります。
    糖尿病は合併症が多い疾患としても知られており、特に糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症は3大合併症として注意喚起されています。
    ほかにも、心筋梗塞や狭心症、認知症や脳卒中、がんや歯周病などさまざまな疾患のリスクが上がるので、適切な治療を受けることが非常に重要です。

    糖尿病
  • 肥満・メタボリックシンドロームについて

    メタボリックシンドロームとは、いわゆる生活習慣病の前の段階として注意喚起される状態です。状態としては肥満や運動不足に起因して、インスリンの機能低下や内臓脂肪の蓄積などが起こっています。
    放置すると糖尿病や高血圧、高脂血症のリスクが上がっていくので、早めに診療につながることが重要です。生活習慣の見直しで改善できる例がありますが、その一方で出生時の環境などに左右されることもあります。

  • メタボリックシンドロームの
    診断基準

    腹囲(おへその高さ):男性85cm以上、女性90cm以上
    ※内臓脂肪面積100c㎡以上相当

    上記の腹囲に加え、以下の3つの中で2つ以上が該当する場合、早めに当院にご相談ください。

    • 高血圧

      130/85mmHg以上(上と下の値のいずれか、または両方)

    • 高血糖

      110mg/dl以上(空腹時)

    • 脂質代謝異常

      中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満(いずれか、または両方)

    メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積や動脈硬化が多く見られ、また脂質異常症や高血圧、糖尿病を併発しやすく、放置するほど脳や心臓に重篤な疾患を起こすリスクが上がります。その点を踏まえて、早めに医療につながることや、生活習慣を見直していくことをおすすめします。

  • 約半数の方が睡眠時無呼吸症候群を併発しています

    メタボリックシンドロームがある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性も考慮すべきです。睡眠時無呼吸症候群は肥満との関連も強いこともあり、男性であれば5割程度、女性であれば3割程度がメタボリックシンドロームと睡眠時無呼吸症候群を併発しています。
    以前からメタボリックシンドロームは糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症(脂質異常症)を併発することが多いとされてきましたが、近年は睡眠時無呼吸症候群と共に語られることが増えており、関連性は無視できないものとなっています。

    睡眠時無呼吸症候群

生活習慣病の予防について

生活習慣病の改善を考える際に、急激に食事を制限したり、過度な運動を始めたりする人は少なくありません。しかし、急激な負荷は心身に大きなストレスとなりますし、継続できなければあまり意味がありません。そのため、まず脂肪分が高い食事を減らすことや少しずつ無理のない運動を取り入れること、規則正しい生活を心がけることなどから取り組むようにおすすめします。
例えば、通勤の一部を徒歩に変える、エレベーターやエスカレーターを階段に変えるなども有効です。また検査や医師の指導を受けることで、取り組みを有効なものにしていくことができます。